第80回手術手技研究会
当番世話人 安田 卓司
近畿大学医学部外科学教室上部消化管部門
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この度、第80回手術手技研究会を2026年9月11日(金)、12日(土)の2日間の日程で開催させて頂きます。1973年(昭和48年)に第1回が大阪で開催されて以来、我が国の手術手技の発展に大きく寄与してきた本研究会をお世話させて頂くことを大変光栄に思います。会場は、1918年の竣工から100年以上の歴史を持ち、国の重要文化財にも指定されているルネッサンス様式建築の大阪市中央公会堂です。荘厳な雰囲気の中で手術手技発展の歴史に思いを馳せつつ、未来の手術を語り、想像して頂ければと願う次第です。
私の手元に第1回から第25回までの手術手技研究会の記録集があったので、少し歴史を遡ってみました。当時は画像も周術期管理も不十分な中、鋼製小物だけで剥離層、郭清範囲、吻合手技の細部にまでこだわって手術を行い、術野や解剖は頭に記憶して詳細に手術記録に残して自らの手術を振り返り、より安全で確実な手技を患者に提供するために妥協を許さずに議論を戦わせていたことが手に取るように分かります。
一方現在は、画像解析や周術期管理の向上はもとより、低侵襲手術手技の普及、体腔鏡による術野解剖の拡大視およびモニターによる術野の共有、手術デバイスの向上、AIによる解剖情報の視覚化やロボット支援による手術精度の向上、さらには手術動画の記録による反復学習等、手術はこの50年で大きく様変わりし、時間をかけて修得するというよりは道具や情報を如何に個々の患者の手術に落とし込んで活用するかが鍵となっています。
しかし、AIやロボットが手術をするわけではなく、手術をするのは外科医自身です。術前の画像から腫瘍進展と術野解剖を頭の中で三次元的に構築し、それを元に手術戦略を立て、場面場面での最適の術野展開をシミュレーションして手術に臨み、各場面で適切な剥離層を描出するためにどの方向にどの程度カウンタートラクションをかけたらよいかを常に計算するなど、術中においては術野の場を創るのは“外科医の頭”です。手術前に手術の成否の大部分が決まっているといっても過言ではありません。
そこで今回は術野展開に着目し、技術革新がもたらす様々な情報の活用による精密な術野把握と手術戦略の構築や術中のナビゲーションによる術野の安全かつ効率的な展開に関して、外科医の知恵と先進技術をどのように融合し、応用していけばよいかを考え、未来の手術の更なる可能性を実感することを目的として、テーマを『術野を制する外科医の知と戦略〜技術革新との融合による未来の手術』とさせて頂きました。
VRや3D構築を駆使した術前シミュレーションやICGを用いた術中の肺や肝臓の区域把握、大腸癌におけるリンパ節郭清範囲の決定、AIによる剥離層や臓器(神経や尿管など)の描出など、その進歩には目を見張るものがあります。しかし、手術は外科医が術野の展開を考えて剥離層を創りだし、術野の状況から外科医が剥離、切離を判断して手術を進めていくもので、技術革新が外科医の経験を補完してはくれるものの、手術は外科医が頭で考えて行うことには変わりありません。
手術の原点に返りつつ、歴史と伝統のある大阪市中央公会堂で、多くの外科医と共に熟練した外科医の知恵と技術革新を融合させた未来の手術について語り合うことができればと期待します。スタッフ一同、皆様の参加を心よりお待ち申し上げます。

(大阪市中央公会堂H.P.より引用)