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第64回日本臨床細胞学会秋期大会
会長 有廣 光司
広島大学病院 病理診断科 教授 |
2025年11月29日(土)、30日(日)の二日間、広島国際会議場・広島市文化交流会館において第64回日本臨床細胞学会秋期大会を開催致します。多くの学会員の皆様に御来広の上、学会にご参加いただきますようお願い致します。
学術集会のテーマは『シン・細胞診―変化と進化を求められる今、私たちは何をすべきであろうか?―』です。細胞診専門医の先生方と細胞検査士の方々を含む大部分の学会員は細胞診に大きな変革の波が押し寄せていることを肌で感じておられると思います。がんゲノム解析のみならず、遺伝性代謝異常症や心臓血管疾患において当該原因遺伝子の異常をホストから採取された微量の細胞を用いて行う時代が到来しました。AIを用いたdigital cytologyは確実に進歩を示し、定量性解析においては人間よりも精度の高い検索が可能になりました。一方で細胞診や病理診断に対する精度管理ないし検体管理体制の構築が求められ、医療の現場においてもこれらに対するきめ細かな対応が必須になって来ました。
このような現在の医療環境と社会情勢の中において学会のテーマの『シン』には多くの同音異義漢字を想起させ、豊かなイメージを生成する力を託しました。最も重要な言葉は『新』であり、『芯』、『進』、『深』、『伸』、『真』、『振』などの言葉が当てはまると思います。すなわち従来からの形態診断というcore『芯』を大切にして『深化』しつつ、『新規』の技術を取り入れ『進化』と『伸展』を示し、医療に貢献する『真』に新しい細胞診を提案し、議論し、その結果として大きな『振幅』の変化が現れ発展する端緒になることを期待しています。
現時点で、決定している演題をいくつかご紹介します。
特別講演は呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)の戸髙 一成館長にお願いしました。内容としては、当時の工業技術の粋を結集して建造された戦艦大和を通して、日本がどうしてそのような高みに到達できたかを解説いただき、現在の日本の経済、産業のみならず医療も含めた問題点を明らかにし、将来への指針を示していただくようお願いしています。また放射線影響研究所の神谷研二所長には広島と福島の放射線障害対策の過去と未来についてご講演をいただきます。
現在、学術集会開催に向けて鋭意準備に取り組んでおりますが、シンポジウムやワークショップの内容は編成中です。今まで本学会では講演や発表をされていない演者を可及的に探して、新しい話題や技術的進歩を共有出来るように企画したいと思います。
広島での日本臨床細胞学会の学術集会開催は広島大学医学部産婦人科教授 故藤原 篤先生が1988年(昭和63年)11月に第27回日本臨床細胞学会秋期大会を主催されて以来実に37年ぶりであり、多くの会員及び非会員の方々のご参加を広島県を挙げて心待ちにしています。2025年には広島駅再開発も完了し利便性も格段に向上します。加えて学会場のすぐ近くにはJリーグサンフレッチェ広島のサッカースタジアム・エディオンピースウィング広島があり、試合が行われない日でもレストランやショッピングが楽しめます。また少し足を伸ばせば宮島や呉などの観光スポットもあります。何より11月の広島は1年のうちで晴天の日が多く、最も天候の良い時期であり、海の幸や山の幸が旬を迎え、東広島や呉の新酒が届くこの季節に、広島の地でお会いできることを楽しみにしています。