第31回日本形成外科学会基礎学術集会
会長挨拶
第31回日本形成外科学会基礎学術集会
会長 木股 敬裕
岡山大学 形成再建外科 主任教授
 皆様「クリスマスローズ」という花をご存知でしょうか?
 ヨーロッパではキンポウゲ科ヘレボルス属原種のニゲルという種類で、12月に咲き花がバラに似ていることから「クリスマスローズ」と名付けられました。日本では江戸時代に輸入され、2月~5月に可憐で美しい姿となり、ヘレボルス属の全種類をクリスマスローズと呼び親しまれています。この花を第31回日本形成外科学会基礎学術集会のシンボルと致しました。

 ではなぜ学術集会のシンボルに?
 この花は、冬にやや下向きで美しい姿を見せます。花言葉は、優しく直向な印象から「いたわり」とも言われています。一方、根には毒があり薬用として利用されていました。まさに医療に関わる植物です。花弁は「がく」といい、丈夫で数か月は散りません。この地上の強く美しい姿を支えるのが幹と根で、それを養うのが「土」です。地上の艶やかな姿や移り変わりは感動を与えますが、枝葉末節の如く大切なのは栄養にあります。土・雨・日光などの環境が美しい自然の姿を支えているのです。そこで、本学会が今後も素晴らしい花を咲かせ、たわわな果実を実らせ続ける期待から、原点の「土」に焦点をあて、テーマを「学び生み出す土を変える」と致しました。ポスターは手書き(大塚デザイン大塚益美作)で花名を「Surgery Flower」と命名しています。

 改めて この度、栄えある第31回日本形成外科学会基礎学術集会を2022年10月13日(木)14日(金)の2日間、岡山市にて開催させて頂くことになりました。岡山大学形成再建外科学教室並びに同門を代表して深く感謝申し上げます。
 また、COVID-19下にもかかわらず、本学術集会の開催に際し多大なるご指導ご鞭撻をいただいている学会の役員ならびに会員の皆様、ご講演を賜ります多職種の皆様、そして企業を始め関係者の皆様にこの場を借りて厚く御礼を申し上げます。

 さて、本学会の歴史を顧みますと、先達の方々の弛まない努力で臨床を軸とした技術発展と世界展開を進め、また基礎から臨床研究の学術面でも時代に遅れることなく発展させてきたことが、形成外科の幅広い領域で世界の形成外科先進国に上り詰めた原動力になったことに異論はないと思います。本学術集会においても、解剖・再生医療・創傷・医療機器開発・美容系開発・教育関係・各国の最新研究など最先端で多岐にわたる領域へ拡大しているのが分かります。

 一方、形成外科の扱う疾患はどうでしょうか? アンチエイジング医療の需要は今後も伸びると予想されますが、減少傾向にあるのが安全な国ゆえの外傷、少子化による先天異常、癌治療の発展に伴う悪性腫瘍関連、非手術治療の進歩による難治性潰瘍等、医療面で望ましいものの形成外科としては一考させられます。固有疾患が少なく学術的発展にも課題があります。しかし、形成外科には「きれいに・3次元的・早く治す」「無から有を作り出す」等の特徴と、「個々の患者に最適な技術提供」「多様な解剖学的部位を扱う」という変幻自在な側面があります。個々の技術で最良の医療を提供するという、最も最先端で夢のある概念の中で生きているのです。

 この夢のある概念をさらに発展させるためには? その鍵は「多様性」と「流動性」です。専門的技術の追求は重要ですが、得てして狭い世界は心地よく外を見なくなります。今までは順風でしたが、新領域の開拓、イノベーション、より良い医療の開発、次世代の刺激と教育、学会の更なる発展を考えると、専門性向上と同時に他科情報の獲得、臨床に繋げる最新研究手法の導入、多職種の考え方や課題解決方法の学習、新規性なき技術の連携で新規性を生み出す等、まさに多様性と流動性が強く求められる時代に突入していると言えます。

 本学術集会の特徴は? 前述の如く本学会の更なる発展のため、形成外科エキスパートも含めて医師のみならず多職種の方々から、最新の研究、イノベーション創出、最新研究技法、基礎から臨床への橋渡しと課題克服、他科境界領域等のご講演とシンポジウムやパネルを企画しました。
 一方、患者に寄り添う医療や良質な研究には、共感力、外観力、内観力(自己を顧みる)、会話力、そして多様性が大切です。手術には当然外観力が必要です。さらにこれからは「正解なき時代を生き抜く力」も求められてきます。そのことを参加者の方々に留めていただきたく特別プログラムを二つ用意しております。一つは、ジブリなどの物語から映像技術と自己を見つめる企画、もう一つは、デッサンを含めたアート体験教室です。

 ぜひ、今後公開していきますプログラムをご覧いただき、様々なアプローチによる最新で多様性流動性のある内容と、「学び生み出す土を変える」というテーマを楽しんでいただき、さらに活発なご討論が展開されますようにお願いいたします。
 最後に実り多い学会となりますよう、多くの皆様のご参加ならびにお力添えをいただけますようよろしくお願いいたします。
2021年11月1日