第51回日本重症心身障害学会学術集会
会長 若本 裕之
愛媛県立子ども療育センター 所長
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第51回日本重症心身障害学会学術集会の開催にあたり、大会長として一言ご挨拶を申し上げます。
第51回学術集会のテーマを「共感と包摂(エンパシー&インクルージョン)」と定めました。このテーマの基盤にある理念は「寛容」の精神です。
私たちの社会は急速な少子化という現実に直面し、これまで前提とされていた社会の枠組みそのものが揺らいでいます。また、歴史はますます暴力的な道を歩み、自然はますます狂暴と化しているように見えます。そのような人間社会の脆さが露呈した時代においてこそ、弱さや違いを抱えた人々に対して、真の意味で「共感」し「包摂」する「寛容」な共生社会の実現が求められていると考えます。
スーザン・ソンタグは『隠喩としての病い』の中で、病いや障害に対する偏見や隠喩が、実は私たち現代社会の欠陥を反映し象徴していると指摘しました。これは、単に個人の問題としてではなく、いまだに生産性や物質的な成功を重視するような、成熟した高度産業化社会と呼べない現代の社会全体の姿勢と構造を問うものです。
しかし、そうした偏見や隠喩を過去のものとし、より多様な価値観を受容する社会を築くためには、まず知識、すなわち「知」の結集が必要です。
その上で私たちは、障害者の顔の表情や声に心を向け、応答しようとする共感的な出会いの中で、さらに「知」の枠を超えた意味や価値に開かれていくのではないでしょうか。
第51回学術集会が「共感と包摂(エンパシー&インクルージョン)」というテーマのもと、参加者一人ひとりが「知」の共有を通じて寛容の精神を深め、これからの重症心身障害医療・療育のあるべき姿をともに模索できる場となることを願ってやみません。