日本総合健診医学会第52回大会
大会長講演
持続可能なやさしい総合健診とは?
〜個⼈や社会が総合健診について感じていることや期待していることとは何だろう〜
⽇本総合健診医学会第52回⼤会
⼤会⻑
浜⽥ 宏
 ⻑く健診に従事していると、⾃分や仲間の努⼒は健診を受けた⼈(以下「受診者」:嫌な⾔葉ですが他にないので)や社会に本当に役に⽴っているのか疑問に思うことがあります。健診をする側の⽬線で⾒れば、がんや⽣活習慣病腎臓病を早期に発⾒したり、健診がきっかけでメタボリックシンドローム・肥満症が改善したら、⾃分たちの努⼒が報われたことになるでしょう。
 しかしながら、受診者の⽬線で⾒れば、健診で不快な思いをさせられたり、異常を指摘され指導や受診勧奨を受けることは、⼤きな⼼の負担とともに経済的負担にもなります。それらを理由に健診を受けない⼈は少なからずいるでしょう。結果説明の際に、「健診結果は問題なく⼤丈夫でしたよ。」と⾔えば、必ず「ありがとうございました。」と感謝されます。すなわち、受診者はチョッと不快ながらも健診を受け、結果的に何もなくてホッとしているのが現状で、健診結果が良かったこととともに健診後の負担が⽣じなかったことに安堵しているかのようです。
 健診を受ける際の不快感や負担感を軽減するには、やさしい⼼配りが必要です。痛みや不快感を伴う検査の担当者は、常にやさしい声かけをしており、実際、受診者アンケートでも、「やさしい声かけをありがとうございました。」の⾔葉をよくいただきます。また、健診施設内の環境についての配慮も重要で、空間・照明・アート・⾳楽・椅⼦などの配置の⼯夫も⼼とからだへの負担軽減に繋がります。
 病気の早期発⾒という健診本来の⽬的を果たすには、受診率の向上が鍵ですが、そのためにも健診のマイナスイメージを払拭する必要があります。⼼配り(優しさ)により安⼼して健診が受けられること以外に、期待されているリキッドバイオプシーなど検査⾃体が容易(易しさ)で⾝体的負担が少ないことや、ミニマム⼈間ドックなど費⽤が⾼額でない(財布にやさしい)ことに加え、健診後の⼼理的・経済的負担を軽減することも受診率の向上と健診の継続受診に繋がると思われます。
 さて、⽇本において2040年問題とも⾔われているように、急激な少⼦⾼齢化に伴う⽣産年齢⼈⼝の減少と医療・介護にかかる⼈的・経済的負担が増えることは社会に⼤きなダメージを与えます。
 ⾼齢になれば、は衰え、※ED ※SYが悪くなり、体⼒も低下し、認知症にもかかることは仕⽅のないことですが、社会からの⽬線で⾒て、総合健診に期待することとは、「健康状態の評価と健康増進を通じて、⾼齢や病気・障害があっても可能な範囲で働ける⼈を増やすことに貢献して欲しい」ということだろうと思います。働く⼈の健康増進を通じて労働⽣産性と働く⼈の幸福度を上げるには企業の努⼒も重要で、健康経営とはまさにそのことです。さらに、⼥性が元気に活躍することも社会にとって必要不可⽋です。
 広く世界に⽬を向けてみます。世界中の全ての⼈が、幸せな⽣活を送れること(well-being)を⽬指し、国連で持続可能な開発⽬標SDGs(Sustainable Development Goals)が掲げられました。SDGsは全ての国が取り組む普遍的なものであり、既に⽇本の国・企業・団体そして個⼈としても積極的に取り組んでいます。総合健診の最終的な⽬標はwell-beingですので、たとえ意識しなくても、私たちはSDGs活動に取り組んでいると⾔えますが、本学会や健診施設はもっと積極的に様々な視点からSDGsに取り組むべきと考えます。
 結局のところ、個⼈であれ社会であれ、⽬指すところは全ての⼈のwell-beingということになります。総じて、⼈と社会が抱く総合健診への期待とは、「社会を下⽀えするシステムとして、やさしく、ひっそりと、あまり意識されることはないけれども⽇常の⼀部として、全ての⼈の well-being の実現に向けて、着実に機能し続けること」ではないでしょうか。期待に応えるために頑張った健診従事者の努⼒の結果は、健診学として後世に語り継がれていくと私は確信しています。
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