こどもと青年をbiopsychosocialに捉え、支援する医療・保健を目指して | |
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五十嵐 隆(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 理事長) |
わが国の子ども・青年の身体・心理・社会的支援体制を構築するための活動の必要性と今後の方向性についてお話しする。 「成育基本法」、「こども基本法」、「こども大綱」の役割についても述べる。 |
モデル動物とヒト脳検体を用いたてんかん・神経発達障害の研究 | |
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星野 幹雄(国立精神・神経医療研究センター) |
神経回路は精巧な遺伝子プログラムによって創り上げられるが、そこに異常が生じると、てんかんや神経発達障害が惹起される。 本講演では、こうした観点からの、マウスモデルおよびヒト手術脳検体を用いた研究を紹介する。 |
冬眠の臨床応用を目指して: マウスを用いた冬眠研究 | |
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砂川 玄志郎(理化学研究所 生命機能科学研究センター 冬眠生物学研究チーム) |
一部の哺乳類は冬になると自らの基礎代謝を低下させる。この能動的な低代謝・低体温状態を休眠とよび、特に数ヶ月に及ぶ休眠を冬眠とよぶ。冬眠中の動物は正常時と比べて数%まで酸素消費量が低下し、体温も環境温度に近くなる。しかし、動物は何ら傷害を負うことなく自発的に元の状態に戻ることができる。冬眠は、全身麻酔による低代謝と異なり「制御された低代謝」であり「能動的低代謝」と呼ばれている。冬眠を人間に誘導することができれば、理論上は全身のエネルギー需要が低下するため、限られた心肺機能であっても生命維持できる可能性がある。 冬眠動物を用いた研究のもっとも高い障壁は、任意のタイミングで冬眠を誘導できないことであった。しかし、2020年に私たちはマウスの視床下部に存在するQRFP産生神経(Qニューロン)を興奮させると、任意のタイミングで、マウスの代謝と体温を数日間にわたって低下できることに示した (Takahashi TM, Nature, 2020)。Qニューロンを興奮させると生じる低代謝をQIH(Q neurons-induced hypometabolism)と名付けた。QIH中のマウスは動き・摂食がほぼなくなり、体温セットポイントが低下し、低代謝に続いて著しい低体温を呈する。QIHを用いることでマウスという普及している実験動物にて任意のタイミングで冬眠様状態を誘導できるため、これまでは実験による検証が難しかった冬眠と他の生理現象との関係性を研究できるようになったのである。 本講演では、冬眠の臨床応用を目指して、低代謝耐性の原理を解明しようとしている試みを紹介する。自然な冬眠では低代謝とともに必ず低体温が伴うため、低代謝と低体温を切り分けて検証することが難しい。しかし、QIHを用いると「温かい冬眠状態」を作り出すことが可能なため、低体温の影響を受けない低代謝を観察することができる。また、最新の実験結果をしめしながら、人工冬眠の実現に向けた研究開発について紹介する。 |
神経病理からみた小児神経学 | |
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伊藤 雅之(国立精神・神経医療研究センター神経研究所病態生化学研究部) |
病理学は、かつて臨床診断には不可欠であったが、近年画像診断と遺伝子診断が取って代わり、臨床医にとって疎遠になってきている風潮が否定できない。1980年代にCTが普及すると、画像診断技術が飛躍的に発展し、いまや高解像度と多様なシークエンスから個々のリアルタイムが記録され、診断のみならず生化学にまで広がりをみせている。しかし、病理学は生体試料を直接扱える利点は現在も有し、生化学や遺伝子工学などを取り入れて拡大を見せている。本講演では、病理診断のみならず、病因・病態解明の手段、治療法解明の糸口としての神経病理学を紹介する。 近年の画像診断技術は体系化されてきた形態病理学に追いつきつつあり、これからの病理学には旧来の枠組みだけではないものが求められている。遺伝子編集技術やiPS細胞の多様化などにより、基礎研究の分野が広がり神経難病の治療法開発へ向かっている。治療を目的とした研究開発のためには、病因・病態を解明し治療のターゲットを特定することが必要である。また、すぐれた疾患モデル動物を作成し、その治療効果を評価する必要がある。それには、モデル動物の疾患としての近似性を判断する際だけでなく、治療の評価においても病理学的知識が求められてくる。実験病理学においては、生化学や遺伝子などの様々な領域の知識が集大成して成り立つ。これらの実例を挙げて紹介し、小児神経学における神経病理学の重要性を再認していく。 |
小児におけるリハビリテーション治療・療育が目指すもの ~医療、福祉、行政、学校、民間との連携~ | |
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藤原 清香(東京大学医学部附属病院 リハビリテーション科) |
本邦では四肢形成不全症の子どもが年間約400名出生すると推定されますが、障害の種類や程度の多様性から確立された治療がなく、一律の支援が困難な状況にあります。そのため医療における関わりだけでは課題が多く、さまざまな専門職と連携し、分野横断的な取り組みが必要でした。そこで上肢形成不全児にフォーカスした運動用義手手先具の開発・普及や絵本の制作を通じ、障害理解と社会参加の促進を目指したり、スライドリコーダー開発を含む新たな取り組みも行なったりしています。これらの活動を通じて、障害のある子どもたちのQOL向上と自己可能性の拡大を目指し、多分野との連携による包括的支援の実践を紹介します。 |
Epilepsy Syndromes with Onset in Infancy | |
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Elaine Wirrell(Chair, Child and Adolescent Neurology, Professor of Neurology, Mayo Clinic) |
Slightly more than half of infants with new-onset epilepsy can be defined as having a specific syndrome. Syndrome identification assists with clinical care by providing clues to underlying etiology, most efficacious therapy and clarifies prognosis. In 2022, the ILAE formalized criteria for specific syndromes. This lecture will review the clinical criteria for syndromes than onset in infancy, along with optimal therapy and prognosis. |
Care for Our Most Complex Patients- care decisions and care systems | |
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Audrey Foster-Barber(Jan Shrem and Maria Manetti Shrem Endowed Professor of Neurology and Pediatrics |
Conditions which result in Severe Neurologic Impairment are increasingly common in Child Neurology. Often these children have complex medical issues beyond the neurologic symptom, including feeding, respiratory and orthopedic problems. Optimal care of these children requires a multidisciplinary team, collaboration with other medical specialties, advocacy within the community and family support. Understanding disease trajectories and family or cultural values are equally important to care decisions. I will review case examples, literature on prominent symptom management issues and approaches to care decisions. I will review the model of complex care for children in the US to allow discussion of how this differs from approaches in other nations. |
From Revertant fibers to Ribitol treatment for FKRP-mutation related muscular dystrophy | |
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Qi Long Lu(Professor, Wake Forest University, School of Medicine, Department of Orthopedic Surgery, |
Mutations in FKRP cause muscular dystrophy with wide-range of disease severity, from mild LGMD2I to CMD. The biochemical feature of the diseases is the lack of matriglycan modification on alpha dystroglycan (a-DG). FKRP functions as glycosyltransferase for the addition of ribitol-5-phosphate to sugar chain of a-DG. Interestingly, individual muscle fibers expressing normal levels of matriglycan persist in almost all diseased muscles, indicating that mutant FKRPs retain at least partial function. This has led to the use of ribitol as a substrate to enhance mutant FKRP function, thus a treatment to the diseases. |